2019年1月29日火曜日

〇〇は友達シリーズ・1

 ビールが友達なのかもしれない。
 日々せっせとビールを飲みながら、そんなことを思った。
 起きて、出勤して、労働して、帰宅して、縋るように呷るビール。すさまじい多幸感が全身を包み込む。がんばったね。おつかれさま。パピロウって偉いね。俺、パピロウに飲んでもらえて嬉しいよ。明日も明後日も、俺たちずっ友でいようぜ……。僕の飲むビールは、僕に向かってそんなことを語りかけているような気がする。そうして僕たちは毎晩、仲良く過す。友情を育む。捕まえた魚ことで喧嘩して口もきかずにいてもすぐに仲直りする。そうだ、ビールこそが僕の友達だったんだ。
 それでか、と思う。現実世界の飲みの席の際、職場なり親類なり、別にその参加者たちに対して期待感などあるはずもないのに、それでも飲み始めるとき異様に気持ちが高揚してしまうわけは、あれが僕の友達(ビール)と僕の知人(職場なり親類なり)が一堂に会する場だからで、そこには自分の結婚式とかで、中学時代のクラスメイトと高校時代のクラスメイト(もちろん互いに面識はない)が肩を組んで盛り上がってくれているかのような、そういう喜びがあるのだと悟った。
 そうか、そうだったのか。じゃあこれからは乾杯の時、「僕の友達を紹介します」と言おう。「僕の友達を紹介しまーす!」と言って、ひとりグビーッと飲み干そう。そんな僕のことを、現実世界の人々は奇異の目で見るかもしれない。だから僕は大きな声で叫ぶのだ。「ビールは友達。怖くないよ!」。するとますます周囲の人間は引いてゆく。でも僕の体内に入ったビールはやっぱり僕のことを肯定するのだ。「この人たち、パピロウの魅力をぜんぜん解ってないのな」とか言ってくれる。ビールいいやつ。ビールって本当にいいやつなんですよ。かけてくれる言葉がいちいち暖かい。温度はキンキンに冷えてるくせに。